前田塁×新城カズマトークセッション



  



■ 出演


 前田 塁(文芸評論家)


 新城カズマ(小説家)



■ 日時: 2010年2月18日(木)19:00〜21:00


■ 会場 : ジュンク堂書店新宿店8階喫茶コーナー





《感想文:出版業界再編について考える》




  



新城カズマさんはジュンク新宿初登場だったのですが来てもらって本当によかったって思います。


「すみません。ライトノベルなめてました。」(平謝り)


「洋書コーナーは《ヤングアダルト》やら《ジュブナイル》っていうジャンルがあるけどなんで日本では和製英語の《ライトノベル》って言うのか」、皆さんちゃんと説明できます? できない人は 『ライトノベル「超」入門』を読んでください。





そして思うんです。「純文学離れも問題だけど、こっちの方がもっと重要だと。ライトノベルを書ける作家がちゃんといて、ライトノベルを読める読者を育てることが!(マンガがあるからいいじゃんという話ではない)」



さよなら、ジンジャー・エンジェル

さよなら、ジンジャー・エンジェル



そして新刊『さよなら、ジンジャー・エンジェル』を読んで、書店員が出てくるからというのもありますけど、すごくうれしかったです。隅々まで気配りが行き届いているというか物語が丁寧に作られていて、これだと中高生も読めるし、これを読んで育つ中高生っていいなって思うし、こういう仕事ができる新城さんを改めて貴重な存在だと感じました。


そんな新城さんはSF作家、ライトノベル作家であり、また柳川房彦という架空世界製造業者でもあり、分析家でもあり、熱烈なSF、純文学の読者でもあり、そして白面では一般人でもあります。(ちなみにトーク登壇中は《黒新城》モードでした。。。)



かたや前田塁さんはこの度『紙の本が亡びるとき?』を刊行された文芸評論家であります。



紙の本が亡びるとき?

紙の本が亡びるとき?



また王様のブランチで本を紹介したり、早稲田文学を編集発行している市川真人さんでもあります。

 王様のブランチ


 早稲田文学3



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前田(市川)さんは本との接し方が一様でないというか「上から目線のえらそうな批評家」ではなくて、当然批評はするけれど、自ら本を作る人でもあるので、本のデザインもするし、値段はいくらで発行部数をいくらにするかも判断するし、どうやって売るかという販売ルートも思案するというスーパーな人なんですね。ともかく本にまつわる全体が見えている人で、川上未映子さんをはじめ、多くの作家から信頼されるのもうなずけます。



はい。そしてトークのテーマ! ジャジャ〜ン!!


 紙の本と物語の未来


前田塁さんの新刊『紙の本が亡びるとき?』の刊行記念ですから避けては通れないテーマなんですね。悲しいかな、ここはリアル書店ですよ!!!


でも冒頭で紹介したようなお二方なので、非常にいいトークになりました。この手の話は広い視野で語らないといけませんし、それができるお二人に話してもらってよかったと思います。もちろん、ものすごく大きなテーマであり、時間も全然足りなくて結論はでませんでしたが、それでも充実していました。


それで、私も最後壇上に上げてもらいました。実は、数日前に私が書店での活動をまとめたレポートを発表しました。


 ハブ型書店の可能性


これは多くの方に読んで頂き、高い評価を頂いてます。ただ冷静に読むとおかしな点がいくつもあるんですね(汗)。それを前田塁さんにズバリと指摘されまして・・・


キンドル等の電子書籍の動向には無力



これはもうどうしようもない。あと5年で街中から書店が本当に消えてしまうかもしれません。今後、リアル書店をビジネスとして成立させるのはますます困難になるでしょう。すでに駅前の小さな書店はどんどん消えていって大型書店がなんとか残っているという状況です。この状況で、ネット書店、電子書籍にお客さんをさらに持っていかれたら、、、


書籍販売はただでさえ利益率が低い儲からない商売ですから、売上がさらに落ちると都心の一等地の家賃はもう払えません。「本を実際に手に取って、なかを確かめてから買いたい」というお客様は必ずいるでしょうが、絶対数を確保できなければビジネスとしては成立せず、リアル書店は消えます。

リアル書店員がリアル書店消えるって断言しちゃってるよ!」とツッコまれて、被告人として壇上に立たされたのです。。。ウソです。温かく迎えて頂きました。


それで短い時間でしたが、書店という現場に立っていて日々感じていることを赤裸々に語らせて頂きました。電子書籍到来というビッグバン以前の問題として、人文書が読まれなくなった問題、新宿の大型書店事情。そして電子書籍到来による業界再編問題。つまり、


作家ー出版社ー取次ー書店ー読者


この構造がビッグバン後に劇的に変わるんですね。ぶっちゃけて言えば


 書き手ーアマゾン(グーグル)ー読者


になってしまう。これは果たしていいことなのか? もちろん書店、取次、出版社は生活がかかっているので否定的です。ただし、書き手や読者にとっても必ずしも良いとは言い切れない。つまり「いい本がちゃんと読者に届くのだろうか? 誰でも本が出せるのはいいことなのか? なんでもアリにならないか? マーケットの原理にまかせて良質な作品がちゃんと残るだろうか? どうしたらいいのだろうか?」


その後、宇野常寛さんにも登壇頂き、現状の出版業界への厳しい意見が述べられました。また前田塁さんからも本を発行している人間として抱える多くの問題についての報告があり、新城さんからは本をめぐる産業構造を示すダイアグラムを提示しながらの興味深い発言もありました。


最後は本当に閉店時間になってしまい打切りとなりましたが、会場には小説ファンはもちろん、書店員や編集者もたくさん詰めかけていて、終演後話してみるとみな一様になんとかせねばならないという強い危機感を持っていることが確認できました。


これは難しい問題ですが、時間に猶予のない大問題なので議論が各所で起こっていい頃だと思います。今回のトークはそのキックオフということで、これからみんなで考えていきましょう!


前田塁さん、新城カズマさん、出版社の方々、会場に詰めかけてくださったみなさま、本当にありがとうございました。





 《書評》朝日新聞2010年2月28日(日)朝刊


 鴻巣友季子文字を巡る環境の激変を考察









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