ブランドとは?




   


岩田松雄『ブランド』(アスコム)読了。



岩田松雄さんという方は存じていなかったが、「元スターバックスコーヒージャパンCEO」と肩書きが書かれていたので買って読んだ。普段は工場内にいるので、「ブランド」ということを意識することも関心もなかったのだが、今後、お客様と直接話したり、仕事で関わることも増えてくると思われたので読んでみた。



一番の興味は、スターバックスがいかにして「ブランド」を築き上げたかということ。岩田さんが言うようにスターバックスのテレビCMを見たこともないし、キャンペーンやクーポン券も見たことがない。にもかかわらず、というよりも、だからこそ、スターバックスはブランドの構築に成功していると言える。



スタバ・ブランド構築術の一番のポイントは、「ホスピタリティ」だろう。コーヒーをお客さんに渡して「はい、終わり」というのではなくて、「風邪なんですか? 早く治るといいですね」といった一言をかけられるかどうかってこと。



(本書では書かれていないが、私はドドールのようにマシンと化して、テキパキと瞬時にコーヒーを出してくれるのも悪くないと思う。このあたりは利用する側も使い分けている。ささっと済ませたい場合はドトール、ちょっとゆっくりしたい時、休日ならスタバというように。さらに言えば、常連客だけで毎日席がうまってしまう地域密着型の個人経営の喫茶店もあるけれど、それはそれでいいと思う。)



この点について、本書でもう少し言及がある。岩田さんは日産で車を販売していた経験があり、そのことについて書かれていた。その時も車を売ったら終わりではなく、お客様の家の近所に出向いた時に、さりげなく「車の調子はいかがですか?」と声を掛けていたそうだ。コミュニケーションを取らないロボットではなく、かといって密着というのでもなく、「さりげなく」というのが重要なのだろう。



あと書中、やはりリッツ・カールトンの話も出てきて、これはもうジャパニーズ・スタンダードというべきか、いわゆる「おもてなし」ってことだけど、スタバも同じ意識をもってやっているということが確認できた。「おもてなし」か「過剰サービス」かの境界は微妙だが、やはり、「ブランド」というのは、こういった日々の「おもてなし」の積み重ねで築かれるのだろうと感じた。



さて最後に、本書について、1点指摘する。「元スターバックスCEOが教える「自分ブランド」を築く48の心得」と表紙にデカデカと書かれていることだ。



この本では、岩田さんの『ブランド』に対する考え、想いが熱く書かれている。その核となるのが「自分ブランド」というキーワードだ。ただ、それを本気で主張するならば、


岩田松雄が教える「自分ブランド」を築く48の心得


と表紙に書くべきであるし、スターバックスの「ブランド」術について書くならば、


スターバックスCEOが教える「ブランド」を築く48の心得


と表紙に書くべきであろう。買う側としても紛らわしい。



書中では「自分ブランド」と主張しつつ、表紙では「元スターバックスCEO」と声を大にして言う。岩田さんは悪い人ではないと思うが、このあたりの使い分けをせざるを得ない事情も踏まえて「ブランドとは何か?」が分かった気がする。






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