藤村龍至研究
■ 次号の『ユリイカ2010年9月号 特集:10年代の日本文化』で建築家・藤村龍至氏インタビューの聞き手を務めるチャンスを頂きました。
■ ありがとうございます。
■ 先日、担当の編集者と打ち合わせをしてインタビューの大枠は決めました。
1.ゼロ年代をふりかえって
2.現状認識
3.10年代の展望
1.ゼロ年代をふりかえって
昨今、藤村龍至さんは、東浩紀さんや濱野智史さんとのコラボレーションなどで、建築外の人びとにも広く知られ、注目されています。しかし、無名の建築家が突然どこからともなく飛び出してきたわけではありません。建築界ではかなり前から有名でした。
特にこの10年、藤村さんがベルラーヘから帰ってきたぐらいからの活動は目覚しいものがあるので、そのあたりをまず確認したいと思います。
2.現状認識
いま、藤村龍至と言えば《超線形設計プロセス論》でしょう。藤村さんの実作『Building K』の設計プロセスのプレゼンが圧倒的なインパクトを有しているので、多くの人びとを魅了しています。
ただ「なぜこれほど藤村龍至が受け入れられるのか」と言えば、ちょっと乱暴な言い方をすれば、『Building K』の、作家の主体的な振るまいを差し置いて、あたかも自動的ににょきにょきと立ち上げってくるような様子が、ニコ動的というか、カオスラウンジ的というか、データベース型思考というか、いかにもゼロ年代という時代、あるいは世代の雰囲気を体現しているからではないでしょうか。だからこそ建築界以外の人びとにも広く支持されるのではないでしょうか。
しかし広く支持される一方で批判もあるわけです。いわゆるゼロ年代批判ですが「みんなで仲良くわいわい楽しそうだね」とお遊び扱いされ、嘲笑され、また先行する世代に「よく分からない」と突き放され、共有されなかったりと。
また建築家ということで言えば、昨今の事業仕分けに象徴されるように、いわゆる箱物建築は実現が難しくなってきています。個人住宅はともかく、社会に影響を与えるような規模のプロジェクトの実現がますます難しくなってきています。つまり建築家のプレゼンスが失われつつあるのです。
このような現状をどのように打ち破っていくのか?
3.10年代の展望
そこで藤村さんの活動で注目したいのが《地域社会圏モデル》です。もちろん《超線形設計プロセス論》もまだまだ改善できるのですが、やはりゼロ年代っぽい。それに対して《地域社会圏モデル》というのは、建築家が10年代をいかにして乗り越えるのか、かなりリアルな話が聞けるように思います。
《地域社会圏モデル》というのは建築家の山本理顕さんが発案したプロジェクトなのですが、かなりリアルな問題提起です。なにがリアルかと言えば、建築家が具体的な形態を与えたというリアルさ以上に、「400人程度による地域社会」という規模がリアルなのです。つまり、これは建築家が仕事を受注できる規模なのです。
山本理顕さんといえば、大学、美術館、庁舎、集合住宅といった大規模の作品を数多く手掛けていられます。しかし、そんな理顕さんであっても、今後は既存のビルディングタイプ、特にいわゆる箱物建築の受注は難しいと考えているのではないか。もし建築家が、社会的な影響力を持つ、それなりの規模の仕事を受注しようと思えば、建築家が自ら新たなビルディングシステムを提案する必要があると読んで、理顕さんは若手建築家に発破をかけているのではないでしょうか。
《私のインタビュー戦略》
『地域社会圏モデル』、藤村さんでいえば『都市2.0モデル』ですが、このポイントを質問する場合、セオリー通りに行けば、以下の3冊を軸にして質問するべきでしょう。
- 作者: クラレンス・ペリー,倉田和四生
- 出版社/メーカー: 鹿島出版会
- 発売日: 1975/01
- メディア: 単行本
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- 作者: アルド・ロッシ,ダニエーレ・ヴィターレ,大島哲蔵,福田晴虔
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- 作者: ジェインジェイコブズ,Jane Jacobs,山形浩生
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確かにこの3冊を軸に質問してもいいのですが、ちょっと建築の話として閉じてしまうような気がします。このラインに沿った質問については今回はやめます。また別の機会を与えられれば、ツッコミ役を務めさせて頂きます。
そこで今回は、軸をちょっとズラして、以下の3冊を軸にして質問をしたいと思います。
NHKブックス別巻 思想地図 vol.2 特集・ジェネレーション
- 作者: 東浩紀,北田暁大
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- 作者: 平田オリザ
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「Jリーグ」のマネジメント―「百年構想」の「制度設計」はいかにして創造されたか
- 作者: 広瀬一郎
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西田亮介さん、平田オリザさん、そしてJリーグ。この三者の活動と藤村さんの活動を比較検討することにより、10年代の可能性が見えてくる。そんなインタビューにしたいと思います。
作業急ぎます。
ではでは。