《福永信フェア担当者日記》
たくさんのお客様にご来店頂きました。
本当にありがとうございました!!!
(7月31日)
(7月30日)汗
■ フルタイムワーク。汗る。
■ 佐藤卓己先生と川島真先生のトークあり。僕は歴史が弱いので可能ならば聴きたかったけれど、人手不足のため準備と片付けのみお手伝い。終日フロアでバタバタ。
■ 居残りコピー&製本。《福永信フェア 選書リスト(完全版)》20部追加!!
■ 《福永信フェア》が明日で終わる。今回の選書の見どころの1つに《詩集》があって、道中、枡野さんの本を読んだり、福永さんの七語調小説(※1)を読んだりして、七五調の文体がいい感じで体内に入ってきて、いよいよ《詩集》へ突入か! と思われたのだけど、違う方向へ行っちゃった。ま、それはそれでいいのだけど。ちなみに僕が読もうと企んでいたのは下記の3冊。フェアは終わってしまうけれど、いつか、地球が何回まわってからになるか分からないけれど、読むだろう。たのしみだ!
吉原幸子
猫
二
篇
可
愛
巻
末
解
説
内
引
用
作
品
「そのコ」(書肆山田)
「びるま」(青土社)
昼
間
宇
宙
※1 ふくながしん「そろそろこんこん もくもくぷかぷか、 ぷんぷんがらがらぺこぺこ」(『母の友』2008年11月号所収)
- 作者: 吉原幸子
- 出版社/メーカー: 思潮社
- 発売日: 2003/02
- メディア: 単行本
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- 作者: ぱくきょんみ
- 出版社/メーカー: 書肆山田
- 発売日: 2003/11
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- 作者: 日和聡子
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2002/04
- メディア: 単行本
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(7月29日 水)そもそも夏休みに宿題を出す必要があるのか?
《福永信フェア》も残すところあと2日!! ぜっひ!!!!!
(7月28日 火)眠眠
■ 洗濯するタイミングを逃す。
■ 四六時中睡魔と戦い、あっさり負ける。
■ 「村上春樹『1Q84』をどう読むか」を読む。全てのコメントが胸に響く。
- 作者: 河出書房新社編集部
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/07/22
- メディア: 単行本
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- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/05/29
- メディア: 単行本
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- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/05/29
- メディア: 単行本
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(7月27日 月)天吾 はり倒しますよ
■ 昼休みに「村上春樹『1Q84』をどう読むか」を買って、ちょろっと読む。オモロー! こういう楽しみ方ができるのね。ベストセラーを読むとさ。さてさて、そろそろ『1968』読もうかな。下巻が7月29日に配本されます。今年の夏は厚い !!!
- 作者: 河出書房新社編集部
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/07/22
- メディア: 単行本
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- 作者: 小熊英二
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2009/07/01
- メディア: 単行本
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■ 先日観劇したFICTION『ディンドンガー』の感想文のページに、劇中のコーラスを追加しました。
■ 《週刊読書人》毎夏恒例のアンケートに参加させて頂きました。ありがとうございます。2009年上半期の収穫として3冊紹介させて頂きました。何を隠そう私は人文書担当なのです。
《ジュンク堂書店 阪根正行》
失われた十年をただ嘆くのではなく、これからの十年を乗り越えるための必須アイテム。
● 岩崎稔・本橋哲也編『21世紀を生き抜くためのブックガイド』(河出書房新社)は、この十余年の間に何が起こり、何が問題となってきたかを出版物を通して再検証するためのブックガイド。キーワードは「記憶と歴史」。
● 西山雄二編『哲学と大学』(未來社)は、大学にグローバル資本主義による市場原理の導入が進むなか、哲学研究者からの異議申し立て。カント、ヘーゲルを始め哲学者の大学論を考察し、大学の理念的基礎を模索する。キーワードは「理念と教育」。
● 東浩紀・北田暁大編『思想地図 vol.3』(日本放送出版協会)は「アーキテクチャ」(建築、社会設計、コンピュータ・システムの三つの意味がある)というアクチュアルなテーマに各方面の論客が挑んだ意欲作。本号でシリーズ三号目となり、いよいよエンジンが掛かってきた。今後も期待したい。キーワードは「批評と実践」。
※ 詳しくは『週刊 読書人』(7月31日号)280円税込(安い!)をお買い求めください!!!
- 作者: 岩崎稔,本橋哲也
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/04/18
- メディア: 単行本
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- 作者: 西山雄二
- 出版社/メーカー: 未来社
- 発売日: 2009/03/01
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NHKブックス別巻 思想地図 vol.3 特集・アーキテクチャ
- 作者: 東浩紀,北田暁大
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2009/05/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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(7月26日 日)IQ=84 天使的 1 / f ゆらぎ
■ 7時過ぎまで店内を動き回る。常備入替え。要するに本の入替え。ダンボール15箱一気。後半バテる。最後は遅番組にバトンタッチ。限界。
■ 昼、ブックデザイナーの名久井直子さんと詩人の斉藤倫さんらしき人ご来店。たぶん。ごあいさつしようとしたが、電話につかまったり、荷物片付けねばならなかったりでタイミングを逃す。こころの中で手をふる 手をふる。
《福永信フェア》で売ってるよ!
■ 編集者の河村信さんご来店。帰り間際に『1Q84』を貸してくださる。ぎょっ!!
■ 佐々木敦さんご来店。喉がやられて声がでないよう。が、このあと鼎談だとか。。。8月に『ニッポンの思想』のフェアをすることをお伝えする。
《ゼロ年代最後の夏は熱いぜ!!!》
テン年代へ向けて!
佐々木敦『ニッポンの思想』で「ニッポンの思想」を総チェック!!!
という感じにしようと思っています。『1968⇔1Q84』フェアも同時開催しており、テン年代へ向けて、ゼロ年代最後の夏に《1968年》と《ニューアカ以降のニッポンの思想》を総復習しようという企画です。ご期待ください!!!
■ 編集・デザイナーの門松宏明さんご来店。顔色がよくて安心。締切りまえは見ていて気の毒になる。人間の生の尊ささえ感じる。その門松さんが《福永信フェア》を絶賛してくださる。平岡正明さんの文章について話す。「平岡さんのような文章が書けたら、もう死んでもいい」とつい言ってしまう。
■ 《週刊読書人》毎夏恒例のアンケートに参加させて頂きました。詳しくは明日の日記で、というか『週刊 読書人』(7月31日号)280円税込(安い!)をお買い求めください!!!
- 作者: 佐々木敦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/07/17
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- 作者: 丸山真男
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1961/11/20
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- 作者: 小熊英二
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2009/07/01
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- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/05/29
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- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/05/29
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- 作者: 河出書房新社編集部
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/07/22
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(7月25日 土)夏休みだ! 関係ないけど。
■ いとこの茂ちゃん&奥さん、西山先生、古谷さんご来店。バタバタしていてほとんど話せず、あいさつのみ。古谷さんが《福永信フェア》の棚をじーっと眺めていた。声を掛けず、そっとしておく。こういうお客様が今回のフェアにはたくさんいてうれしい。
■ 佐々木敦さんのブログをチェック。佐々木さん、どうやら三軒茶屋シアタートラムで再演される『true/本当のこと』(8月6日〜9日)のアフタートークに出演されるらしい。
僕が出るのは、初日6日の公演後です。ディレクションと照明を務める藤本隆行(dumb type)さん、機構設計を行なった齋藤精一さんと話します。
えーと、この齋藤精一さんというのは、僕の大学の同期の精さんです。
いつのまにそんなにえらくなったんや!!!!!
ま、これはちょっと脚色した言い方で、彼の活躍ぶりは数年前からめざましいのです。
『true/本当のこと』、まだ観てない方はぜひ!!!
《総合芸術》
■ 会期:2009年8月6日(木)〜9日(日)
■ 会場:三軒茶屋シアタートラム
■ チケット購入: こちらから
拙著:『true/本当のこと』@横浜赤レンガ倉庫 公演評
拙著:川口隆夫『グッド・ラック』@川崎市アートセンター 公演記録
(7月24日 金)雨止む→洗濯物干す→出掛ける→また雨降る→明日どうする?
■ 今日は《哲学デー》。デリダとにらめっこ。夜、西山雄二先生のレクチャーを聴く。
■ 早大生協の永田淳さんからイベントのお知らせを頂きました。
興味のある方はぜひ!!!
連続講義「大学の夜」第九夜
2009年のモビライゼーション
われわれは何について考えるべきなのか?● 講師:
白石嘉治(フランス文学)
ほか
● 日時:7月29日(水) 19時15分〜21時00分
● 場所:早稲田大学生協ブックセンター(閉店後)
● 入場無料・事前予約不要
● 概要
今回は、2007年10月の第一夜と同じ両氏、白石嘉治氏と矢部史郎氏を講師にお迎えします。
このイヴェントを続けている2年間に様々なことがありました。金融危機があり、新自由主義は釈明に追われ、資本主義は黄昏をむかえたようにみえます。しかし、新自由主義者は釈明しつつも新たな意匠を纏い闊歩しつづけているようです。そこでは繰り返し危機が語られ、崩壊が秩序だてられています。
この状況の中、ただ恐れたり、もしくは再生の到来を期待するのではなく、新たに概念を練り直す本――『VOL lexicon』(以文社)が刊行されました。この本の編者が「大学の夜」 第一夜講師の両氏であり、今またここに両氏をお迎えすることは偶然ではありません。両氏は反ネオリベラリズムのために言葉を尽くした地点から、概念を練り直そうとしているように思われます。
もう一度静かにじっくりと考えはじめる場になればと思います。そのために今後の「大学の夜」は、幾度でも同じことを取り上げていきたいです。
ご参加をお待ちしております。
- 作者: 矢部史郎,白石嘉治,他、VOL編集委員
- 出版社/メーカー: 以文社
- 発売日: 2009/07/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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(7月23日 木)《来店記録》(フェア篇)
そうそう、イソケンの『終の住処』単行本もう店頭に並んでたよ。
15日、松田青子さんとスポンジスターの装幀を担当された畠山香織さんご来店。《青》に眩惑される。たしか《佐々木敦×福永信トーク》のとき、福永さんから「松田青子さんは用事があってこれなくなりました」と言われていたように思っていたら、いらっしゃったので受付でまごまごした記憶がある。来られなかったのは青木淳悟さんだったのだ。なんで間違えるねん!
それで今度は、福永さんから「松田青子さんが描いた絵が表紙になった本が出たのでフェア棚に置いてください」との連絡あり。松田さんはラジオのパーソナリティーなんかをやっているようで、「この人、絵も描くんか。多芸やなぁ〜」って感心していたら、青木陵子さんの間違いだった。なんで間違えるねん!! ちなみにその本はこちら。
どうも「青子」というのが名前と思えなくて、かってに名字に変換していたようなのだ。それも一度ではなく二度も。青田松子なら分かるけど、松田青子というのが、どうしても覚えられなかったようなのだ。青・松 松=木 青木 !?
なんか、小学2,3年の頃、おやじに「このたこ焼き、下の○○さんのところへ『おすそ分けです』って言って渡してこい」と言われて、この『おすそ分け』という言葉がしっくりこなくて覚えられず、『残りものです』と言って渡して家に帰って報告したら、おやじにマジ切れされて一晩中説教くらったのを思い出した。これ個人的にすごいトラウマ。
ま、この話はもうええわ。翌日16日、青木陵子さんの旦那さんの伊藤存さんご来店。作品集にサインをして頂く。サインをしてもらっている間、しばし雑談。
Zon: 阪根さんのブログは「阪根タイガース」っていうんですか。阪神好きなんですか。
阪根: はい。
Zon: 優勝するといいですね!
阪根: ・・・・・。
「優勝するといいですね!」。一点の曇りもない笑顔で、そして、澄みやかな声で言ってました。不意を衝かれて、つっこめませんでした。
ま、この話はもうええわ。 Zonさんのサインはこんな感じ。
ふしぎな感じ。どこまでがサインでどこからがイラストかが分からない。見たこともないキャラクター。そう言えば、以前、金氏徹平さんにもサインをしてもらって(残念ながら完売しました)、金氏さんもふしぎなイラストを書いてくださいました。やはり、見たこともないようなキャラクター。そんなキャラクターがにょろにょろと描かれる様をみていると、アーティストの指の先からキャラクターがぴゅーっと飛び出してくるように見えました。子どもを産むみたい。子ども産むとこ見たことないけど。
《 Big News 》
■ 伊藤存さんが目黒の庭園美術館の展覧会に出品しています。《ステッチ・バイ・ステッチ》(7月18日〜9月27日)。
■ 伊藤存さんと金氏徹平さんが、東京都現代美術館コレクション展で展示やってます(7月18日〜10月4日)。
■ 一昨日来店された冨井大裕さんが横須賀のカスヤの森現代美術館でグループ展します。「アテンプト2」展(8月1日〜10月4日)。
■ 冨井大裕さんは、第1回所沢ビエンナーレ美術展『引込線』にも出展されます。(8月28日〜9月23日)。
展覧会いっぱい!!! アーティスト万歳!!!!!
- 作者: 尾崎翠
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/07/03
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- 作者: 伊藤存
- 出版社/メーカー: リトルモア
- 発売日: 2006/08/23
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- 作者: 金氏徹平
- 出版社/メーカー: 赤々舎
- 発売日: 2010/09/01
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※ あとビックリですが、Zonさんがこの本にも出ています!!! アーティストに違いありませんが畠違いです。。。
- 作者: いしいしんじ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/10/03
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やっぱりロックだな〜
(7月22日)真夜中
きょうは観劇デー。
FICTION『ディンドンガー』を新宿で観る。山下澄人さんと白迫久美子さんと昨年の保坂和志先生のトークイベントのあと打上げの時に話して、あたたかい人たちだったので、どんな演劇やっているのか知らなかったけれど、「この人たちが作る演劇は観るべし!」と悟っていたので、今日行ってきた。
感想はこちら。
でも感想読むより、ともかく実際に観てほしい。チケットはこちらからお求めください。
帰りの電車で本を読もうと思ったけれど、演劇の余韻が強過ぎて読めず。FICTIONの前作『しんせかい』の台本をふわふわと読む。ぷかぷか、ぼーっとしてたら、あっという間に郊外に流されていた。
カレー食べて帰宅。
(7月21日)淋しいのはお前だけじゃな
冨井大裕さんと写真家の柳場さんご来店。作品の撮影。すごいカメラでバシバシ撮る。あんないいカメラで撮られたら作品もそして《福永信フェア》も幸せだろう。2ヶ月間がんばった甲斐があった。よかったね。
「姉さん、事件です」。なんて、ちょっと話をはぐらかしたけど、7月18日の日記はコアな話です。「時間の逆転現象は可能か?」という見出しに、拙著「羽生善治とピカソ」をリンクしましたが、ここで一番読んで欲しいのが、石岡良治さんの論文「必ずしも信じていないことを信じている時がある。」です。僕は未だにこの論文のことをずっと考えてます(未だ解けていません)。石岡さんには色々教わったなぁ。ブルームやらフォションやら。
【石岡論文要約】
タイトル: 必ずしも信じていないことを信じている時がある。
物語には「始め」と「中間」と「終わり」がある。そのうち「始め」と「終わり」はコード化されやすい。これはゲームにおいても同様であり、「序盤」と「終盤」については、特に「定石」が成立しやすい。つまり、ゲームにおいて局面が最も複雑化するのは、中盤である。
プレイヤーが取りうる「手」の選択肢の数が最も増大する中盤において、分岐点は至る所にあり、局面の進行を見極めることが最も困難になる。もっとも、正確に言うなら、「序盤から中盤への移行」と「中盤から終盤への移行」という2つの移行こそがゲームにおける最重要点である。熟練者は「どこで定石が終わるのか」(序盤)、あるいは「どこで定石が導入されるのか」(終盤)という特異点のありかを探り、中盤への、あるいは中盤からの移行を首尾良く成し遂げようとする。
ここで話を物語に戻す。物語におけるナラティヴの進行を統御しようとする様々な試みは、レトリックと呼ばれる。レトリックは、認識的機能を担い、出来事の因果性を操作する役割を担っている。
例えば「愚か者が穴に落ちる」「愚か者が崖を飛び越える」という2つの格言について考えてみよう。前者は賢さの必要性を、後者は愚かさの有用性を示すものになる。ここで両者を分岐させるのは、行為の帰結である。しかし、これらが「教訓」として認知されるのは、本来行為の帰結に基づいて事後的になされるはずの「愚かさ」という評価を予め行為者に指定し、時間を「逆転」するというレトリックによる。
レトリックのこのような機能は、ゲームの中盤におけるプレイヤーの状況と対応しているかのようである。だが、レトリックはいわば「中盤における定石」とでも言うべきものを構成することによって、プレイヤーの役割を代行し、免除する。このように定義上のプレイヤーを必要とするゲームとは異なり、「物語のプレイヤー」という表現は、明確さを欠いている。
ここまでは、格言(物語)におけるレトリックについての話であるが、ここで見られるような時間の逆転、時間の反対進行は、可能であろうか。だが、時間を反転させる試みは、レトリックの統御を越えていると言わざるを得ない。なぜなら、ナラティヴ進行の統御可能性それ自体が、時間は「取返しの付かないもの(純粋時間)」として与えられることを条件としているからである。格言(物語)において、行為者たちは局面の進行を様々なやり方で統御しようとするが、そのつどの局面(純粋空間)を恣意的に設定するわけではない。
この純粋時間と純粋空間が最も良く定義されるのは、ゲームにおいてである。例えばチェスにおいて、純粋時間はプレイヤーの「順番」、純粋空間はチェス盤で繰り広げられる「局面」として現れる。これは、物語にとっても不可欠な成立条件である。
したがって「物語のプレイヤー」を「物語内の登場人物」から区別する必要があるだろう。例えば『オイディプス王』における「逆転」と「認知」の瞬間において、自己の運命に打ちのめされるのは、もちろん主人公のオイディプスである。しかし、運命の反転は、読者に前もって提出されている。ナラティヴ進行に真に立ち会うことになるのは、読者なのだ。だが、厳密には読者が進行を統御するわけではない。他方、時間や局面(純粋時間と純粋空間)は、物語におけるプレイを可能にする条件であり、プレイヤーではない。むしろプレイヤーは、物語によって、そのつど構造的に要請される次元に位置している。
まず第一に、純粋時間や純粋空間が物語を与えるのだが、今度は物語がプレイヤーを与えることになる。「物語のプレイヤー」とは、この二重の贈与によって定義される存在者であり、読者、登場人物、さらには作者といった物語に関与する様々な人称性の次元のそれぞれの位置を占めつつも、それらからは区別されるのである。
こうして「プレイヤー」をめぐるゲームと物語の関係の非対称性が再定義されるに至る。「物語のプレイヤー」は、「始め」と「中間」と「終わり」のそれぞれの進行形式に応じて、逆転や認知のプロセスを用いつつ、物語の局面のそれぞれにおいて、様々な出来事を出現させる。こうした出来事は、ときには純粋時間や純粋空間の条件付けに対してすら作用するだろう。
[石岡さんの文章で参照されている文献]
マルセル・モース『贈与論』
マリオ・プラーツ『ムネモシュネ』(文中での本書名の紹介はなし)
ソポクレス『オイディプス王』
※ 石岡さんのこの論文、今はネットで全文読めます。新生活レクチャー。ただ第2段落が丸ごと落ちてます。以下を補って読んでください。
[第2段落]
「始め」と「終わり」がコード化されやすい理由を考察するために、ゲームを例に取ってみよう。あるゲームに習熟したプレイヤーならば、序盤と終盤については特に「定石」が成立しやすいことに気付くはずである。もちろんこのことはボードゲーム、カードゲーム、テレビゲームの別を問わない。ゲームにおいてプレイヤーが取りうる「手」は、様々な可能性の束から随時選択されることになるが、序盤においては攪乱条件が発生しない限り、最善手を取ることでプレイをうまく統御することができる。他方終盤ではゲームの終了条件へと向けて可能性の束を収斂させるべく、プレイヤーは「定石」を開発することになるだろう(「詰め将棋」あるいはチェスの「プロブレム」)。
- 作者: アリストテレース,ホラーティウス,松本仁助,岡道男
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1997/01/16
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- 作者: ソポクレス,藤沢令夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1967/09/16
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《福永信フェア》も残すところあと10日!! ぜっひ!!!!!
(7月20日)海の日
今日はあさから枡野書店店主の枡野さんが働いていた。《枡野浩一&内田かずひろフェア》7階東エレベーター前フェア棚でやってます。トークもやります!!! ぜっひ! あ、『僕は運動おんち』と『淋しいのはお前だけじゃな』も読みました。 小難しい感想を言えば、枡野さんは村上春樹でも山田詠美でもなく枡野浩一だということだ。そして僕は、枡野浩一でも村上春樹でも山田詠美でもなく僕だということなのだ!
今日は少し早めに出勤。フルタイム勤務を覚悟していたが、作業はけっこう捗った。大掛かりな常備入替えを2社やっつけ、8時過ぎに上がる。芸術担当が始めたフェア棚からコミさんの詩集と平岡正明さんの本を購入。この詩集が本になった経緯が、とてもコミさんらしい。娘さんのりえさんらしくもある(笑)。公園か海かでぼーっとしながら読みたいな。平岡さんの本は大谷能生さんもオススメしていたので即決で買った。すぐには読まないけれど、ガッツリとは読まないけれど、チビチビやりたいと思う。
《福永信フェア》も残すところあと11日!! ぜっひ!!!!!
- 作者: 枡野浩一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/06/26
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- 作者: 枡野浩一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/03/19
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(7月19日 日)夏日
■ 公園で2時間ほど、ぼーっとする。
いろんなことを一旦リセットする。
■ フェア、トーク大盛況はうれしい。が、その反面、ここのところ人手不足で一般棚の作業が回っていない。そのため、フェアの棚の手入れもできなくなるという悪循環。さらに来月からの新しいフェアの発注もせねばならない。明日から立直し。
(7月18日 土)時間の逆転現象は可能か?
※ 磯崎憲一郎『終の住処』の主人公の変人っぷりが、イソケンさん本人とあまりにも酷似しているため、イソケンさんの現実世界の夫婦仲を心配する声が止まないそうです。が、「あれは別にモデルがいるんですよ。変な誤解をされるから、受賞作の『終の住処』よりも『世紀の発見』を読んで欲しい!」とのこと。
あぁ、よかった〜。マジ心配したよ。ま、イソケンが変人であることに変わりはないが。
5月14日 佐々木敦×鹿島田真希トーク終了後
「イソケンとトークやるぞ」と佐々木さんから言われる。
6月29日 トーク受付終了(満員御礼)
7月02日 芥川賞候補作品発表
7月15日 芥川賞受賞
7月18日 トーク開催
磯崎ワールド(小説)に現実が呑み込まれてしまったようだ。《1行先も予測できない!》というのは福永信さんの本の帯に書かれているコメントだけど、これぞ、まさに磯崎ワールド。このタイミングで芥川賞獲るかよ! ちょっとやり過ぎだろ!!! 姉さん、事件です。だって、今となってはもう今回のトークが芥川賞受賞を記念して開催されたとしか思えないじゃないか !!!!!
7月02日 芥川賞候補作品発表
7月15日 芥川賞受賞
7月18日 トーク開催
この歴史記述の方がしっくりくる。いずれこのように歴史が書き換えられる(時間が逆転される)ことでしょう。
佐々木敦さん新刊発売(7月16日)。このタイミング、芥川賞作家とトークするために、自ら気合いを入れるべく新刊発売としか思えない。
そして、飛ぶように売れる!!!
福永信さんからも祝福。フェア棚で磯崎本を展示!
トーク大盛況!「やっぱりロックだな〜」の名言も
サイン会
サインを求める行列
サインをちゃっかりもらう筆者
- 作者: 佐々木敦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/07/17
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芥川賞・磯崎憲一郎『終の住処(ついのすみか)』単行本の発売が7月23日に決定しました(店頭発売24日ごろ)。お楽しみに !!!
(7月17日 金)《来店記録》(人文篇)
15日、荻上チキさんと内藤朝雄先生がご来店。チキさんと会ったのは初めて。内藤先生はもちろん初めて。《荻上チキ&SYNODOS》棚をご覧頂く。先日、宇野常寛さんが来店された時は《アーキテクチャ(思想地図 vol.3)》棚だったところ。《福永信フェア》棚のような大掛かりなフェア棚とは別に、短スパンで、お客様へタイムリーな本を紹介する棚としたいと思っている。
チキさんにポップを書いて頂きました!
荻上チキさんや、鈴木謙介さん、宇野常寛さん、濱野智史さん等、若手で執筆活動が軌道に乗りつつある作家を中心に紹介していく予定。前線に立つ彼らを応援する一方で、そろそろ博士論文との格闘に終止符を打ち、執筆体制を整えつつあるアカデミーの強者ども(例えば平倉圭さんとか)がうまく合流できるような状況をつくることを目論んでいる。
- 作者: 内藤朝雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/03/19
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社会的な身体~振る舞い・運動・お笑い・ゲーム (講談社現代新書)
- 作者: 荻上チキ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/06/18
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10日、編集者の河村信さんご来店(河村書店の方です)。河村さんにアドバイスを頂き《1968⇔1Q84》フェアを開催。河村書店でも公表されているリストをベースに選書。『1968』の出版元である新曜社さんからも選書リストを頂いたので追加発注。今後も関連書籍を随時追加していく予定。
ん! 一緒に並べてみたかったのです。。。
マーク・カーランスキー『1968』がよく売れる。
小熊英二『1968』(新曜社)はおそらく人文書における2009年一番の話題作だろう。すでに仲俣暁生さんからは読後のコメントが発信されている。今後、仲俣さんに留まらず、「1968年問題」をこの本をきっかけにして、広く議論されたい。
正直言えば、10年遅い。もう10年早く議論されねばならなかった。「1968年問題」の当事者が社会的責任のあるポジションから退きつつある今となっては、議論してもリアリティがない。
「最近の学生はなっとらん。オレたちが学生の頃は先生がつまらない講義でもしようものならボイコットしたぞ! オマエらもかかってこい!」という粋な先生は、10年前僕が学生の頃にも残念ながらいなかった。毎年同じプリントを配って、こそこそとしょうもない講義をしている人が大半だった。
「1968年問題」の当事者は、もうどうでもいいと思う。彼らがどうこうではなく、これからを見据えて「1968年問題」をみんなで共有して広く議論されたい。
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(7月16日 木)ビジネスマン=ゴルフ時代の終焉!?
磯崎さんに直接聞いたことはなかったのだけど、海外での生活が書かれていることが多くて、その雰囲気からおそらく四大商社のどこかに勤めている人だろうと思っていた。その通りだった。「なんだ、エリートじゃん」という気持ちも確かにある。でも「商社にも小説書く(読む)人いるんだ」という思いの方がもっと強い。
僕は、どちらかと言えば「体育会系」の人間だ。僕自身は、大学が理科系単科大学だったこともあり、選手はあっさり断念したけれども、いわゆる「体育会系」の優秀な人間をたくさん見てきた。「こいつには勝てん」と思ったことも多々ある。なにも競技に限ったことではない。スポーツとビジネスとは相性がいいから体育会の優秀な選手がビジネスパーソンとしても大成することが多々あり、その意味でも「こいつには勝てん」と思うことしばしばである。
ただ、やはり彼らに共通している決定的な欠陥は「文化的素養」がないこと。趣味と言えばゴルフと相場が決まっている。ゴルフが悪いとは言わないけれど。それに企業のトップの愛読書をチェックしても、せいぜい司馬遼太郎が出てくるぐらいで、小島信夫を読んでいる人なんてまずいない。貧しい。
ま、磯崎さんは変人だし、一般化は不可能で、仕事と執筆とを完全に切断しているように思われるので、この文脈で語るのは無理がある。が、今回の受賞をとりあえず「プチ《革命》」と記憶しておく。
※ この2日間は充実していた。いろんな人と会って、いろんなことを話した。それはまた改めて。