プロ野球【アジアリーグ構想】



1.メジャーリーグと日本球界


井川慶松坂大輔は年齢的に考えても、実績を考えても、本人の行きたいという希望があるならアメリカに行かせていいと思う。野茂さんやイチローさんのようにすぐに活躍できるかもしれないけど、違った環境に慣れねばならないし、向こうに行ってからも2〜3年は試行錯誤の時間が必要になるだろう。そう考えるとやはり30歳を超えてからだと難しい。


日本球界のレベルを維持するという全体的な問題があるにせよ、選手個人の伸びる芽を摘むことの代償は非常に大きい。少なくとも現時点ではアメリカの方が厳しいし、失敗して選手生命を断たれるリスクもあるのだから、一方的に我が儘とは言えないだろう。むしろ、こういう流れを球界全体がサポートしていくことが大切だと思う。


では日本球界のレベルを維持するためにはどうすれば良いか。例えば外国人枠を撤廃してはどうだろうか。日本に限定すると人材が足りないならば、日本人よりパワーのある韓国、台湾、あるいはキューバプエルトリコから人を集めてきてもいいと思う。今はまだそういった動きが一般化していないからうまくいかないことも多々あるだろうが、育成、コーチングも踏まえたノウハウを構築すれば十分可能だと思う。


2.21世紀という時代


こんなことを言うのは何故かと言うと、21世紀がどのような時代になるのかが、なんとなく見えてきたからだ。それは車が空を飛ぶような時代ではなく、20世紀に認識されていたボーダーが薄くなり、活動圏が変化し新たに形成される時代。少なくとも21世紀前半は、そういう時代になるからだ。


例えば今まで世界地図を見るときに赤く塗られた日本を中心に眺め、日本とそれ以外という見方をしていただろう。それが21世紀に現れる一つの可能性として、日本海東シナ海黄海)を取りまく日本、ロシア、北朝鮮、韓国、中国、台湾が1つのまとまりとして認識され、日本はその1つの地域に過ぎないと認識される。そして世界を、その地域とそれ以外という見方で認識することが想定される。もちろんインターネット等の普及でヨーロッパ、アメリカは距離以上にもっと身近に感じられるだろうし、今まであまり認識できていなかった中央アジア、アフリカ等も視野に入ってくるようになるだろう。


こういった時流には野球界もうまく乗ってしまえば良い。その方が自然だし、可能性がある。当然、問題も起こる。日本球界が韓国、台湾から選手をごっそり持っていってしまうと韓国、台湾球界が打撃を受けるのではないかという懸念。それについては逆に日本からも選手が韓国や台湾にどんどん行けば良いと思う。そうやって選手が盛んに行き来すれば、あるレベルでの生態系がうまく形成されるだろう。そしてしばらくは1.アメリカ、2.日本、3.韓国、4.台湾といったヒエラルキーができてしまうだろうが、その問題に対しては次の展望にも手を打っておけば良い。


3.プロ野球アジアリーグ構想】


バレンタイン監督が、ロッテが日本一になった時、アメリカに連れて行ってワールドチャンピオンと戦わせたいと言っていたが、まんざらウソではないだろう。それなりの手応えがあったのだろう。これは単なる夢ではなくて、実現可能な夢と考えて良いだろう。ちょっと手堅い考えだが、真のワールドシリーズ開催に向けての構想を述べよう。


今、日本球界ではその規模が問題とされている。日本で12球団を保持するのは無理ではないか。8球団ぐらいが適当ではないかと。このあたりはもっと多方面から分析する必要があるだろうが、端的に日本だけで所有することを前提とするから伸びしろが見込めず無理だという発想に、縮小化するという発想になってしまうのだと思う。これを日本、極東ロシア、北朝鮮、韓国、中国、台湾でシェアすると考えればどうだろうか。この規模からすればアメリカ球界と同じ30球団ぐらいは所有できるのではないか。


当然、問題は多々あり実現は困難を極める。韓国、台湾の球団経営の現状は日本以上にひどいし、中国はまだまだ始まったばかり。ロシアにはまだないし、北朝鮮は政治的に問題をクリアして貰わねばならない。おそらく、当面はアメリカ球界のレベルに近づくどころか、逆にレベルが落ちるだろう。しかし、日本球界という規模で考えると頭打ちしているのは事実だし、ともかくポテンシャルの大きさ、また企業も国内だけでなく、この規模での発展を視野に入れれば、球界に積極的に関与してくれることが見込めること。移動の問題も、距離的にアメリカと同じ程度の負担だから十分可能であること。そういった点からもこの動きには妥当性があると言える。


そして、この規模のリーグが成り立てば、名実の伴ったアジアシリーズを開催することができ、その勝者とアメリカチャンピオンが戦えば、真のワールドシリーズとなるだろう。


このレベルまでくれば、逆にアメリカからアジアでやりたいという人が出てくるかもしれない。実際、甲子園や千葉マリンの雰囲気はアメリカのスタジアムより熱気に満ちていて、選手も燃えるだろう。それにアジアの方がアメリカよりもレベルが高くなるなんてことも起こりうるだろう。さらに、そういったさなかに、ヨーロッパやアフリカ等でエキシビジョンマッチをすれば、異なる地域で新たなリーグを発足できるかもしれない。


ちょっと話が大きくなったが決して不可能ではないし、21世紀という時代の動向からすれば、むしろ自然なことのようにも思える。


1選手のメジャー行きを許可するか否かを判断する場合も、これぐらいのことは視野に入れて判断して欲しい。


(2005年10月30日)



※ photo by montrez moi les photos
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【参照文献】
01.奥田碩『人間を幸福にする経済』PHP新書
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0103858545

02.星野仙一『勝利への道』文春文庫
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0102269868

03.サミュエル・ハンチントン文明の衝突と21世紀の日本』集英社新書
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0100019893

04.サミュエル・ハンチントン文明の衝突集英社
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0198433188

05.網野善彦『「日本」とは何か』講談社
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0100621946




人間を幸福にする経済―豊かさの革命 (PHP新書)

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勝利への道 (文春文庫)

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文明の衝突と21世紀の日本 (集英社新書)

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文明の衝突

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日本とは何か 日本の歴史〈00〉

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